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母さん助けて日記

母さん助けて詐欺のない世界を祈りながら綴る日記+α

20151205

今週末も婚約者が東京へやってきた。
今、わたしの精神の状態が芳しくないので、話し合って、落ち着くまで週末はなるべく彼が様子を見に来ることになったのだ。

彼がやってきたのは11時頃だった。
二人でドラッグストアに行き、銀行に行き、TSUTAYAに行き、西友に行き、セブンイレブンに行って、帰ってきた。買ったものを手分けして、決められた場所にしまった。
そして昼食を摂った。彼はロールパンを焼いてクリームチーズを塗ったものとゆでたまごとコーヒー、わたしはフルーツグラノーラにプレーンヨーグルトをかけたものとゆでたまごと牛乳を食べた。わたしたちは二人ともあまり物を食べない。わたしが皿を片付け、彼が食卓を片付けた。

それからApple Musicのトライアル期間が終わってからめちゃくちゃになってしまったiTunesを直した。彼はその間昼寝をしていた。
2つある窓のうち、1つの窓のカーテンを閉め、中途半端な明るさの部屋でceroのレコードを薄く流していたが、彼は気にとめる様子もなくぐっすりと寝ていた。

40分ほど経ってから彼を起こして、出掛ける準備をした。病院に行かなければいけなかった。
1年弱通っていた病院で気分の良くない対応をされたので、評判のいい病院を探して予約をしていた。先日電車の中で見知らぬ女性とトラブルになってから、外に出るのが怖くなってしまったので、彼に連れて行ってもらうことになっていた。

病院の前で「俺は髪を切ってくるから」と言って、彼は病院のすぐ近くだという美容室へ向かった。彼は3週に1回くらいのペースで髪を切る。でも毎回あまり変わらない。

新しい病院は、前の病院とは比べものにならないほどきちんとしたところだった。待合室は清潔で静かで程よく薄暗かった。
医者の治療方針は、なるべく薬を使わず、認知行動療法とカウンセリングで根本治療を目指すというものだった。薬を飲むのにはもう飽き飽きしていたので、ほっとした。こんなその場しのぎではなくて、何かもっと違う方法があればいいのに、と思っていたところでもあった。

医者は鈴木亮平に似た、若い男性だった。わたしは今の精神状態について話しながら涙ぐんだりする一方で、医者の顔を見るたびに「精力が強そうだな」と思ってしまって、自分は本当に病気なんだろうかと思った。
胃の病気に罹っている人は刺激物を食べられない。わたしは心の病気に罹っているが会社に行ける。映画館にもライヴハウスにも行ける。
ただ生きていることが苦しい。でも、生きていることが苦しいということが病気なのだとしたら、人間はほぼ全員病気ということになってしまう。

毎日、対象のぼんやりとした激しい怒りを感じている。心の中に常に憤怒と憎悪が鎮座している。物心ついてから、怒りを感じなかった日がない。そしてそれを適切に発散したり解消したりできた日もない。殺してやりたい人間が何人もいる。夜、部屋で物を壊すことがある。いつか逮捕されるのではないかと思う。

中島さんは物事の認知の仕方が歪んでいるから、人より怒りを抱きやすい。だからまず歪んだ認知を直しましょう。それでも人は怒りを抱く生き物だから、怒りを抱いた時どのように解消すればよいか、その技術を身に付けましょう。長く苦しい治療になると思います。でもきっと治ります。頑張りましょう。

鈴木亮平似の医者はそう言い、わたしは頷きながら彼の左手の薬指を見た。指輪はなかった。「よし」と思った。何がいいのか。

診察が終わったと連絡すると、婚約者から、俺も髪を切り終わったところだと返事が来た。しばらく待っていると彼が走ってきた。髪型はやはり大して変わっていなかった。
「ねぇ、何かこの髪型変じゃない?」と言われたので「そもそもあんまり変わってないし、変でもないよ」と答えた。彼は「雑に切られた気がする」としきりに前髪を気にしていた。
今度からわたしと同じ美容室に行きなよ、すごくいいところだよ、と言うと、うーんと言いながらもみあげを触っていた。

その後、ルミネで食事をした。店を出るなり彼が「トイレ行ってくる」と言って早足でトイレの方へ消え、しばらく戻ってこなかったので腹の具合でも悪いのだろうかと思いつつ待っていたら、また早足で帰ってきて「この髪型変じゃない?」と言った。わたしは、気になる気持ちは分かるけど別に変ではない、でも気になるならきちんと髪質や要望を理解してそれに合わせた髪型にしてくれるサロンに行った方がいい、わたしの通っているところはそういうところだから今度はそこに行くといい、と同じことをまた言った。
彼は今度は「そうしようかなぁ」と答えた。
「服は気に入らなければ着なければいいけど、髪型は一度決まったらしばらく変えられないから、ある程度金をかけた方がいい。髪は自分の身体の一部で、自分自身の身体に気に入らない部分があることは、些細なことのようでストレスになる。自分の身体を不安や不満のない状態にしておくことは重要なことだと思う」というようなことを言うと、彼は、確かに、と言った。

イルミネーションでキラキラした丸の内仲通りを、東京駅まで歩いた。
きれいだね、きれいだね、と言いながら歩いた。きれいだ、それは間違いなかった。でもきれいなものも、楽しいものも、愛おしいものも、素敵なものも、自分を救ってはくれないのだと思った。自分の心を救えるのは自分しかいない。医者も婚約者も友人も力強いサポーターではあるが、わたしの苦しみを和らげることができるのは、わたししかいない。死ぬまでに治ればラッキーくらいの気持ちでとことん向き合うしかない、というようなことを考えていた。

隣できれいだね、と言っている彼は何を考えていただろうか。わたしはいつもわたしのことばかり考えている。わたしのことだけを考えている。彼がわたしのことを考えている時も、わたしはわたしのことを考えている。他に考えたいことも考えるべきこともないような気がする。

帰りの地下鉄の中、少しだけ眠った。短い夢を見たが、目を開けた時には内容を忘れていた。何だか知らないが眠くて仕方がなかった。
ぼーっとしたまま手を引かれて家へと帰り、化粧も落とさず倒れこむようにすぐ眠った。おやすみ、と彼に言ったかどうか、覚えていない。わたしが眠った後彼は何をして、何を考えていただろうか。

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