母さん助けて日記

母さん助けて詐欺のない世界を祈りながら綴る日記+α

20210905

お待たせしました、と約束より10分ほど遅れて現れた男の顔には全く見覚えがなく、いやマスクをしているから当然か、と思い直したものの、彼が座りマスクを外しても、それは変わらなかった。 頬のあたりが乾燥して赤くなっている。 首の詰まった白いTシャツに…

おしらせ

2014年からここで続けてきた「母さん助けて日記」ですが、このたびnoteに引っ越すことにしました。 リンクは以下の通りです。 改めてブックマークやフォローをしていただけるとうれしいです。 https://note.com/toukonakajima コピペ作業をしながら昔の記事…

20201218

仙台へ向かう新幹線の中、窓の外を流れる景色をずっと見ていた。田畑と街とが繰り返される。はかったように同じ高さの民家が並ぶ地帯にさしかかると、空が開けて遠くの山々が目に入る。山は頂きに前日の雪をかぶっており、その上にはさらに不穏な雲が浮かん…

20191208

始発を待つホームで震えながら缶のコーンポタージュを買い、両手で包み込んで振り、頬にそっと当ててから飲んだ。缶の熱さに比べると中身は生温かい。案の定粒はほとんど出てこなかった。友人に、美味しかったよ、と言うと彼も同じものを買い、「意外とぬる…

20190918

給食当番の子どもがかぶるような帽子に、金のハイライトの入った明るい茶髪を押し込み、大きなマスクにエプロンといういでたちで、兄は病室に現れた。 もともと大きな頭は給食帽で余計に際立っているし、目の下まであげたマスクは、同じく大きな顔にはいかに…

20190309

最近、ふとしたことから、10代から20代にかけて割と長く付き合っていた元彼氏の奥さんのTwitterアカウントを見つけてしまって、よくないと思いつつ時々見ている。いや、よくなくないのかもしれないけど、気持ち悪いのは間違いない。わたしだったら間違いなく…

20181012

駅へ向かう夜道、あたりが暗いせいで電車の窓のあかりだけが目の先の橋をたたたた、と横切って、月並みだけど、空を走っているようだと思う。 終電間際の電車はガラガラだった。みんなこんな時間にどこに行くのだろう、と考えて、出かけるのではなく帰る人も…

20181011

以前、通勤電車がなかなかいいものだとここに書いたが、何回かの乗換の途中、快適でない区間がある。尻に触れているのが人の手なのか鞄か何かなのか判断がつかないし、それ以前に四方を人に囲まれ、顎を上げ気味に呼吸しなければならなかったり。今朝、尻の…

20181006

部屋のフローリングの上に腹ばいで寝るコツメカワウソの頭を、爪の長い指が撫でる動画を見ていた。額を前から後ろへ撫でる指が、時々小さな耳の上を通る。そのたびにぴこ、と動く耳が、独立した動物のようでいとおしい。耳はぴこぴこ動くのに、気持ちよさげ…

20180927

何の前触れもなく静かに電車が止まり、何事かと窓の外をよくよく見ると、並走する電車が同じ速度で走っているので止まったように見えただけだった。 ふたつの電車の速度は徐々にずれ、窓の外を人々が流れていく。 マスクをした背の高いスーツの男性、赤い抱…

20180130

この年末年始は、実家に帰らなかった。正確に言うと、帰るつもりで飛行機のチケットをとっていたが、数日前にキャンセルをした。 母にメールでその旨を伝えると、すぐに電話がかかってきた。涙声だった。父を許してやってほしい、という話だった。 秋口に、…

20171201

毎日日記をつけているという友だちが、何人かいる。わたしも何度となく挑戦したものの毎回挫折してきたので、よく続けられるなぁ、と感服しつつ自分の意思の弱さにがっかりもするのだけど、この間、そんな日記継続中の友だちと久しぶりにご飯を食べ、お互い…

20171115

時が経てば、悲しい気持ちは小さくなっていくと思っていたけど、悲しいと思う頻度が少しずつ減るだけで、悲しさの大きさは一切変わらないことを知った一年だった。毎月、月の真ん中に赤いバラを生け、写真を眺めては、なぜこんなことをしているのだろう? と…

20170916

台風が来ているというのに億劫だからと傘を持たずに出たら、案の定降られてしまった。友だちの折り畳み傘の中に入れてもらいながら、新宿の西側を歩く。街の光が濡れた道路をキラキラさせていた。人の多いところにいたせいで体が熱くなっていて、左肩を打つ…

20170811

なくなってほしくないと思うものがある。 この間わたしは友だちを場外馬券場に連れて行った。まだまだ初心者ではあるけれど、一応一年半くらい競馬ファンをやっているので、競馬は初めて、という彼女をアテンドすることになった。 2レース買って、わたしはか…

20170430

結婚するずっと前、既婚者の男友達ふたりに、どんな時に奥さんを愛してるって思う? と訊いたら、ひとりは「ふてくされてる顔を見た時」もうひとりは「寝顔を見た時」と答えた。どうして? と訊くとふたりは似たようなことを言った。小さな頃も、こんな顔を…

20170303

結婚おめでとう、と言われる時期を過ぎ、結婚してみてどう? とか、楽しい? と訊かれる機会が増えてきた。何回訊かれても、「いやぁ、分かんないなぁ」「どうかなぁ」みたいなことしか言えない。もしこれが死ぬ直前だったら「いい人生だった……」とか言う可…

20170223

この間、池袋に映画を観に行く途中、ふと思い立って、一駅前の東池袋駅で地下鉄を降りた。去年の春に引っ越すまで十年くらいその近くに住んでいたので、久しぶりに少し歩いてみたくなったのだ。 階段を上って地上へ出ると、左手すぐに建つ店に、赤いにわとり…

20161202

雨宮まみさんがいなくなってしまったという報せをうけて、信じられないけど、もう20日くらい経ってしまう。この間の金曜、わたしは大好きなceroのライヴを観に、新木場にあるSTUDIO COASTに行った。STUDIO COASTは、わたしがまみさんに最後に会った場所だ。c…

20161111

映画を観に行くために久しぶりに早く起きた。早くと言っても9時くらいだけど、いつもは11時過ぎでないと起きられないので、早い方だ。賞味期限が切れたパンにバターを塗って焼いて、録画しておいたコント番組を見ながら食べたが頭に入らなかった。 最近無性…

20160723-24

土曜に友達と会った。 本当は7月の頭に会うはずが友達が風邪をひき、中旬に延ばしたが今度はわたしが体調を崩し、延び延びになっていたのが、やっと実現したのだった。 パンケーキを食べながら散々話して、コーヒー屋に場所を移すまでの間、友達が映画『FAKE…

20160522

昨日、日比谷野音で行われたceroのライヴに行った(もしceroを知らない人がいたらググってください)。わたしはceroが大好きで、このライヴを心の底から楽しみにしていた。比喩でなく、指折り数えてこの日を待っていた。去年の秋ごろから、つらいことが続いて…

20160312

ライヴハウスへ向かう途中、ホテル街で足早に前を行く女の子の後頭部の左側の毛がうねっていた。もともとの癖にも見えたし、寝癖にも見えた。黄味がかった茶色に、金のハイライトが入っている。腰のあたりにリボンがあしらわれた白いフェイクファーのアウタ…

20160101

元日のO市は、一面真っ白な霧に包まれていて、ヘッドライトをつけても、数メートル先までしか見えなかった。ハンドルを握る父はスピードを落とし、そろそろそろと駅まで車を走らせていた。自分がどこにいるのかも、きちんと前に進んでいるのかも分からなくて…

20151205

今週末も婚約者が東京へやってきた。今、わたしの精神の状態が芳しくないので、話し合って、落ち着くまで週末はなるべく彼が様子を見に来ることになったのだ。彼がやってきたのは11時頃だった。二人でドラッグストアに行き、銀行に行き、TSUTAYAに行き、西友…

20151130

仕事が終わって地下鉄で病院に向かう途中、Twitterで水木しげる先生が亡くなったことを知った。正確に言うと、みんなが水木先生の話をしていたので「亡くなったんだな」と思っただけで、公式な訃報には触れていない。 台所で母親が夕食の準備をしている気配…

20151003

定期的に薬をもらいに行っている婦人科で、勧められるままに検診を受けたら、左の卵巣が腫れていることが分かった。 「野球ボール……いや、テニスボールくらいの大きさになっています」 画像を見せながら医者はそう言ったが、わたしは野球ボールの大きさを知…

20150917

午前中、同期の女の子と一緒に研修を受けて、流れでそのまま一緒に昼食を摂ることになった。 わたしたちはざっくり言えば同期ということになるが、入社の時期も少しずれているし部署も違うので、それまで互いの顔と名前も一致していない状態だった。 外に出…

20150915

先日、出会って間もない人に「中島さんて、人間のこと信用してないでしょう。見てると分かるよ」と言われた。 彼の言う「人間」の定義も「信用」の意味することの範囲もよく分からなかったので、「どうでしょうね、少し考えます」と答えたら、相手は面食らっ…

20150908

新しい職場での仕事が楽しい。 毎日、新しいことをものすごい勢いで教えられている。でも全くつらくない。 頭がぐるぐる回転して、キーボードを打つ手が高速で動いて、言葉がどんどん口から溢れる。アドレナリンが出ているのが分かる。 こういう風に自分の頭…